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<Deep Sea Water Essay>第6章:深層の物語

海洋深層水は、ただの水資源ではありません。海のはるか深く、太陽の光も届かぬ静寂の中で、数千年もの時をかけて地球を巡ってきたこの水は、まるで神話の世界とつながっているかのような神秘性をたたえています。

ハワイやポリネシアの伝統文化において、深海は神々や精霊の住まう領域とされてきました。とくにハワイの海の神「カナロア」は、深海と死後の世界、そして癒しを司る存在として崇拝されており、深層から湧き上がる水は、彼の力を宿した“聖なる水”として儀式や祈りに用いられてきました。

ハワイ神 Kanaloa(カナロア):クック諸島1$コインより

また、ポリネシア神話における原初の世界「Po(ポ)」も、深海の闇とつながる概念です。この“Po”からすべての命が生まれたとされており、深層水は宇宙創生の記憶を内包した水とも言えます。さらに「wai」や「vai」といったポリネシア語での“水”という言葉は、単に液体を指すだけでなく、命や富、祝福を象徴する言霊としての意味も持ちます。

こうした神話的な背景に加えて、世界各地には深海を神聖視する文化が存在します。日本の「竜宮」や「わだつみの宮」、西洋のアトランティス伝説など、海の底には叡智や精霊が眠っているという発想は、時代や地域を超えて共通しています。

竜宮伝説を描いた玩具絵(明治18年:國利)

プラトン(紀元前348年没)が創作したといわれる「アトランティス伝説」想像画

ハワイ島コナ沖で汲み上げられる海洋深層水は、グリーンランド沖から2000年をかけて流れ着いたものです。その透明度や清浄性の高さは科学的にも証明されていますが、私たちにとって本当に魅力的なのは、こうした神秘の物語が宿っている点ではないでしょうか。

海洋深層水は、太古の記憶と精霊の気配をたたえた、地球からの贈り物です。その一滴に込められた物語に耳を傾けるとき、私たちは自然とのつながりを思い出し、命の源に対する敬意を新たにすることができるのです。

<Deep Sea Water Essay>第7章:私たちの海、私たちの未来 へ続く

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