<ヒット商品考察>禅と断食の発想法
今回は誰もが知るビル・ゲイツとスティーブ・ジョブズの発想法について紹介します。二人は両者ともにテクノロジー産業における非常に重要な人物であり、マイクロソフトとアップルという2つの大手企業を創設しました。同じコンピュータ業界にあって双極にあったビル・ゲイツとスティーブ・ジョブズ。しかし二人の発想法においては近いものがありました。
ビル・ゲイツの発想法「思考週間」
ビル・ゲイツは年に2回、”Think Week”(思考週間)と名付けた1週間を設けています。これは完全に一人で、無干渉の時間を過ごし、新しいアイデアや将来のトレンドについて深く考えるための期間です。彼はこの時間を使って、大量の書籍を読んだり、マイクロソフトの社員から提出された提案書を読んだりします。この週間はゲイツにとって重要な意味を持っています。無干渉の時間、つまりノイズを一切断ち切った「情報断食」の期間を持つことで、日常の仕事から離れて大きな視点で物事を見ることができ、新しいアイデアや視点を深く探求することが可能になります。彼はこのプラクティスを通じて、ビジネス戦略を再評価したり、新しいテクノロジーのトレンドを見つけ出したり、マイクロソフトの将来の方向性を決定する重要な洞察を得ることができました。
スティーブ・ジョブズの「禅 ZEN」的発想法
スティーブ・ジョブズは自身の人生やビジネス哲学において禅の影響を明確に受けていました。彼は若い頃にインドを訪れ、禅の教えを探求しました。また1970年代には日本人の禅僧-乙川弘文氏から指導を受けています。この経験は、ジョブズの思考法や彼の製品デザインに対するアプローチに深い影響を与えました。禅の教えは、簡素さと無駄の排除を重視します。これはジョブズのビジネス哲学にも反映されており、アップル製品のデザインには明らかなシンプルさと直感的な使いやすさが特徴となっています。禅は直感と経験を重視し、頭で考えるよりも体験することを重んじます。ジョブズもまた、直感を非常に重視し、新しい製品やアイデアを考え出す際にこれに依存していました。
ビル・ゲイツとスティーブ・ジョブズがテクノロジー産業の先駆者的な存在であり、時代の最先端を走り抜けた二人でした。しかし二人のビジネス哲学に大きな影響を与えたのは、アナログの最たるものといえる宗教的行為「断食」や「禅」でした。そういった意味では、最先端のデジタル技術は、奇しくもアナログ思考により生み出された産物といえるのかもしれません。